雑感

空 見上げていこう ~思い出されるあのときの記憶~

メビウス

どうも、「かざみわし」狩谷亮裕です。
何気に当サイトマスコット以外での初アイキャッチ画像となりました。

これは、タバコのメーカー。メビウスのポスター。
昔から馴染みのある人は、「マイルドセブン」といった方がピンと来るでしょうか。
という前置きはこれぐらいにして。

このポスターがよく行く近所の薬局に貼られてあるのを見かけるたび、私は胸がジーンとなるのです。
きれいな青空と満開のさくらに添えられた、「空 見上げていこう」の文字。
何だか、私がいちばん精神的に切羽詰まってたころ。大学のあった奈良で現地のヘルパーにかけてもらったあたたかな言葉と景色を思い出すのです。

『歪んだ先読み』がじゃました5年前

思えば、あれは5年前のこと。もう5年もたつんだなぁと今となってはしみじみですが。
私は、大学という新たなステージと、そして奈良県という新天地に降り立ち、身も心も新たに大学生活をスタートしようと思っていました。
これから思う存分将来の仕事のために、「好き」でもある心理学を学び、いつかどこかで仕事に就いた時にしっかりと役立てよう。そして、好きを極めようと。

けれども、過去の記事でも書いたように、大学進学前から人間関係に自信をなくし、「人間関係氷河期」だった私。

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もう少し他人を信じたり、助けを求めてうまく寄りかかりながらenjoyしていければよかったのですが、当時の私は、自分以外は信じられず。自分以外のすべては敵 ぐらいに思っていましたから、そういうことは到底不可能だったわけです。

というか、進学以前に人間関係のこじれを未解消のままこちらへ来たものだから。
「どうせ、頼っても上手くいかないのだろう」という、失敗経験の積み重ねからくる、
『歪んだ先読み』がじゃまして、すべてを自分でこなさなきゃいかんと 何もかもを自分一人でしょいこみすぎていたわけですね…。

桜咲いてるで

そんなこんなで、私は大学内での勉強はもちろん、どこに行けば何の施設があるという、キャンパス内の広~い地図まで覚えねばならず、地図やらだだっ広いところを把握するのがニガテな私にとっては業のような日々が続きました。
私の頭はもう、アップアップ。隠しもせず今にも泣きそうな顔で学生サポートセンターを訪れた私。

そこで係の人が、「そんな顔するなよ。泣きそうになってるぞ。ここまで来たら、助けてあげるのに。」その人は私を気遣っての精いっぱいの言葉をかけてくれたのでしょう。
けれど当時の私にとってはそれが、心なく・冷たく、重く響いたのでした。

 

以下、当時の私の心の声を記す。

「ここまで来たら」って、アホか!
私はここまで来るのにもどんだけの思いで来てると思ってる!

トイレ等で授業に入るのが遅れたら、その分のところはその先生の部屋へ空き時間に行って、分からないところを聞けばいい。
空き時間 って?冗談じゃない!
大学入って1年目はほとんどの人が空きなくびっちりと組むだろう!
今の私に空き時間なんてない。それに、分からないところを聞きに行ってる間に、休む間もなく次の授業があるじゃないか。そうすると、一つ分かっても、また一つ”抜け”が出てくる。その”抜け”を埋めるのに、また別の授業を抜けろというのか?同じことの繰り返しじゃないか!

※当時の心の声をそのまま書き記したため、過激な言葉も含まれています。ご了承ください

私は懸命に叫びました。なりふりかまわず、ありったけを、泣きながら。
けれども、相手方からの反応は、そこまで思い詰めることじゃない。なんとかなるから。と
ふわんとしたものばかりで、何一つ具体的なものはありませんでした。

私はなんとかあがいて大学生活を送ろうとの思いで必死でした。
けれども、あ、この人もダメだったか。信用した私がバカだった。

もういいです。

脱力した声で一言だけそういい、クルッと帰路についた私。
行きは、今日こそは自分のしんどさを伝える!分かってもらいたい!と意気込んでいましたが、あの勢い、切迫感がうそのよう。
帰るころには、すべてが脱力し、頭の中の大部分が無力感に支配されていました。

辺りはもう、下校の時間。私はなんとか覚えた、サポートセンターから校門までの道のりをトボトボと漕いでいました。
途中、何やら楽しそうに話す男性2人組の自転車が抜いていきました。
「今日の、分かった?」「わからん」「後で部屋で教えようか?」そんなことを言っているように聞こえました。

君たちはおなじ1週間で楽しく話せる友ができたのか。そういうことを笑って話せる距離にもうなったのか。
自分と同じだけしか今年の時間は経ってないのに、えらい違いだな。ま、どうでもいいや。もうなにもかもどうでもいい。

 

当時のことをできるだけ鮮明に思い出して書きましたが、パソコン上の文字を見るだけでも、相当病んでましたね。
けれどこの時、自転車の男性2人組とすれ違ってから、無力感だけだった私の脳内に、ふとこんな考えが浮かびました。

自分は何のためにここへ来たんだ?
好きな心理学を極めるためではないのか?
楽しく学ぶはずだったのに、今は楽しいか?楽しくなる見込みはあるのか?

 

そして、門を出て、私を迎えに来たヘルパーと合流し、短い距離ですが、電動車いすを悶々と走らせる私に、ヘルパーさんがふと、言ったのです。

頑張るのもいいけど、上、見上げてみ?桜さいてるで。ほら、きれいな桜。

相変わらず、自問自答していた私。他の人の声などシャットアウトしていたはずですが、彼の声はスーッと入ってきました。
感情の波を立たせるでもなく、悶々とした考えをさえぎるでもなく。
まるで、桜の花びらが一枚。春のやさしいそよ風によって、ふわり舞い上がるように。

その時の桜並木のきれいさは、今でも忘れられません。
自分が泣きそうだったから というのもあるでしょうが、桜のほうも露を含んで太陽に照らされ、キラキラと輝いていました。

この時の景色と感情があまりに強烈だったからでしょう。
今ではだいぶ落ち着きましたが、それでも春の桜。とくに満開を過ぎて散り始めを見ると、いまでも胸が苦しくなって、泣きたくなる時があるのです。
けれども、それでこの日、ずっと悩んでいた問答に答えが差しました。

自分は何のためにここへ来たんだ?
好きな心理学を極めるためではないのか?
楽しく学ぶはずだったのに、今は楽しいか?楽しくなる見込みはあるのか?

その問答に対し、私の心が出した答えは、No。楽しくなる見込みはない。でした。
こうして、大学を辞める決心がついた私。その日、アパートの自分の部屋に入った私は、心なしかいつもよりおだやかで、少しだけ他人に対して心が開けるような気がしていました。
桜散るおだやかな昼下がり。大学入学から11日目のことでした。

このメビウスのポスター。
どアップで映る、画に納まりきらず、途中で切れているさくらの花びら。
これだけで十分なのに、追い打ちをかける「空 見上げていこう」の文字。

私はタバコは吸いませんが、よく行く薬局で。車の窓越し。たばこの自販機の下に、なにやら。たばこの自販機らしからぬ、爽やかな色合いが目にとまりました。
そうして目を凝らしたら、感動!感動を通り越し、感涙しかけました。
あのときの、辛くも救われた(浄化された)記憶と言葉が5年の時を経て、再び鮮やかによみがえったからです。  もう少し早く、このポスターと出会っていれば…そんな気さえしました。

これは記事にしたい。心に灯がついたもので、「かざみわし」に載せた次第でございます。久しぶりの復帰作品は、少ししんみりとしたフレーバーにて。
それでは、今日はこの辺で。
~風の向くまま。気の向くままに~

おまけ

このことを記事にしたい。そう思い立ってから数週間後。
私がこの4月から働き始めた会社で流れている曲に、このポスターと同じぐらい当時の記憶や、その時の私の心情を見透かした上でかたりかけてくるような、運命の一曲を聞いてしまったのです。

私は、この曲を初めて聞いた時、仕事中にも関わらず、胸がドクンドクンと波打ち、感情が高ぶってきているのに気が付きました。再生リストの曲はランダムなので、その時は見逃しましたが、今度流れてきたときはタイトルを確認してやろうと構えて、その日に備えて、BGM用のスマホの位置や、操作方法などを観察し準備は万端。

そして先週の金曜日。その時はやってきました。
実は、同じ日の昼食前。いちど流れたのですが、その時は、BGM用のスマホが置かれているテーブルのある厨房付近はバタバタ。確認にいけませんでした。

けれども午後からの作業再開にあたり、職員さんがBGMをかけ直す。この時の曲の並びが、午前と同じ。なので、狙っている曲の1,2曲前から当たりはつけていたのです。

時間は3時半前。みんな、帰る支度をほぼ終え、今日もお疲れ様と和やかムード。
私は、この日、会社のHPの記事作成用に写真撮影に行くので、みなさんとは別便。外履きへのチェンジを終えたタイミング。曲の方はというと、ラストのサビ。人はまばら。これは今しかない。

こうして決死の覚悟で終わりスレスレに確認できたその曲のタイトルが、

だったのです。
曲が分かったところで改めて、ジ~ンときたところの歌詞を動画をかけながら見てみると、このように書いてありました。

さくらの花ひらり 君の横で揺れている

今なら言えるよ 伝えたい大切なこと
夢を追いかけて 誰かを愛して
傷ついて人は輝けるよ

はい、もうどストライクに射抜かれました。
特に傷ついて人は輝けるよなんて、もう。
私の傷を癒すために流れてきてくれたのかと。
会社に行きだして1か月あまり。この曲を初めて聴いた時、妙に心が落ち着かないなと思った理由が分かりました。

あとで調べてわかったことなのですが、この曲は映画チア☆ダンの主題歌だそう。
チア☆ダン自体も実在する学校・実際のサクセスストーリーを描いた名作ですが、あの映画にこんなゆったりとした、心に響く名曲があったとは。気付かなかった。まさに、隠れた名曲です。

歌詞だけでもジ~ンですが、それをゆったりとした曲調でやさしく語り掛けるように歌われると、余計にしみますね。
みなさんも、きいてみてください。