考察

仮面ライダーセイバー第5話 感想①

どうも、お久しぶりに「かざみわし」狩谷亮裕です。
今日は、仮面ライダーセイバー第5話について、書いていきたいと思います。

以前、こちらの過去記事で

仮面ライダーセイバー 注目ポイントどうも、「かざみわし」の狩谷亮裕です。 前回、解禁された情報をもとに、気になったことを挙げていく と言いましたので、今回はそれを書いて...
言葉の持つ力である、『言霊』も作品を追っていくうえで押さえておきたいポイントであるということをお話ししたかと思います。

今回の第5話は主人公、神山飛羽真はじめ、様々な人物の思いや言葉がそれぞれの人物に影響を与え、つながっていく…。そんなかんじでした。例えば、もしあそこで尾上さんが賢人に「親子そろって頑固だねぇ」というあのやりとりがなかったら。飛羽真が賢人に「助けが必要な時は必ず言ってくれ」がなかったら。5話のようには進んでいなかったかもしれません。それをいうと、3,4話での飛羽真とのかかわりを通じて尾上さんが飛羽真のことを認める これがあったからこその5話のやり取りなので、5話単独として見るのではなくて、今までの言葉や行動がつながっての5話なんですけどね。

今回は5話の考察というより、登場人物同士の『会話』に着目して書いていきたいと思います。

富加宮父子は親子そろって”頑固”

3話でソフィアに対して、「あれは俺の責任。俺が背負うべき罪。」と言っていた賢人。このセリフからもわかるとおり、富加宮賢人というキャラクターは真面目で責任感の強い性格。

今回5話で視聴者に顔見せ というよりは息子である賢人の回想シーン中心でその存在が明らかになった父隼人。
ネットニュースなどでの報じられ方を見ていると、今のカリバーは本当に隼人なのか?という気もしますが、ひとまずそれはおいておくとして。

幼き息子に「賢人、また背のびたんじゃないか?」と優しく問いかける隼人。その笑顔からも息子の成長を素直に喜ぶ父 というかんじですし、人柄がよく真面目そうだなというのは、もう伝わりますよね。息子も息子でソードオブロゴスで剣士の一員として戦う父親を誇りとしている「父さん大好きっ子」。
15年前にあの事件が起こるまでは、二人の親子関係は良好だったんだなということが伺えます。

メギドとカリバーの目的はやはり違う

ちょっとシーンを進めまして、最後のシーン。これまで不明瞭だったメギド達の目的がデザストの口から語られました。その目的とは、『ワンダーワールドを侵食し、のっとって支配する』こと。それを倫太郎と芽依の前で話すデザストに「しゃべり過ぎだ!」といって強引に止めに入ったことから、デザスト独断というわけでもなく、メギドサイド共通の目的とみていいでしょう。

それに対してカリバーは、5話でもストリウスに対して「アヴァロンだ」と言っていた通り、『アヴァロンへの到達』が主たる目的。
1話の時点から彼らの会話の噛み合わなさが目立つので疑ってはいましたが、やはりカリバーとメギド達の目的は違っていました。しかし、異なる目的の”通過点は同じ”ということで一時的な協力関係にあることが明らかとなりました。

それを表現しているのか、5話の相関図を見てみると、これまで「黒い本棚の面々」として一緒の枠内にあったカリバーに正式に「元ソードオブロゴスの剣士」として紋章付きで分けられている一方、幹部メギドの面々は「メギドを司るものたち」と表記され、明確に違う勢力であるということが示されています。
仮面ライダーセイバー第6章「疾風の如く、見参。」

あと、このシーンでのちょっと気になったところは、仲間とか連帯意識という言葉とは無縁そうなデザストがズオスにたいして「これはこれは。生物を司るズオス様。」とズオスを『様』付けで呼んだこと。もちろんデザストのことなので真意かどうかはわかりませんし、その場しのぎ的なかんじで。本人も前にしていることだし、ノリで『様』って言っとくか~と挑発的な意味合いも秘めての『様』付けかもしれません。(個人的にはこっちじゃないのかなと思ってます)
ですが一応、同族であるメギドには多少なりとも仲間意識みたいなものがあるのだなと感じました。
これらのことを踏まえると、復活早々カリバーに「お前に言う必要があるか」と切り出したのも納得です。

それでも、ストリウスがカリバーに「そろそろ教えてくれませんか。彼にこだわる理由を」と問いただしたことからもわかるように、カリバーとメギド側の関係性にも亀裂とまではいかなくとも、地盤がキシキシと音を立てて軋み始めている。つまりカリバーの行動倫理や考えに対して(少なくともストリウスは)疑問を持ち始めているのは確か。明らかになったカリバーの正体とともに彼らの動向にもより一層注目。ですが彼らが袂を分かつ日もそう遠くないのかもしれません。

15年前の記憶を巡る2人…
~とそれをつなぐ尾上さん~

今回の5話で私が一番印象的だったのは、物語中盤の賢人と尾上さんとの会話。尾上さんが炭酸ぶちまけた、本人も放送終了後に言及していたシーンですが、印象に残ったのはもちろん、そこではありません。(笑)
冒頭にも書いた通り、あの会話がなければ、賢人の気は張りつめていたままでしょう。
もしあのシーンがなく、そのまま次のシーンである、暗がりのファンタジック本屋かみやまで飛羽真と賢人が二人で話していたなら、話運びはこうはならなかったはずなんです。

飛羽真が自分の過去の記憶について話している時、大切なものを失っている気がしてならない。15年前から時間が止まっているようなかんじ。その答えを探したいという飛羽真。飛羽真には女の子がどこかへ吸い込まれる瞬間がフラッシュバックしている中、それを側で聞く賢人も「15年前から時間が止まっている」のは意味は違えど同じなわけで。
その対比として、二人の、女の子が吸い込まれる記憶には、時間が止まっている。その瞬間だけで前後の記憶のピースが欠けている という意味で飛羽真のそれには音がない。その僅か20秒ほど後。「答え…」とつぶやいた賢人の記憶として、今度は女の子が「飛羽真ー!」と叫びながら異世界に吸い込まれる、同じ記憶が映し出される。

絶対に助ける!と約束したのは飛羽真なので、指切りの指が離れるアップから ではありませんが、2人とも女の子が吸い込まれていくその瞬間は印象に残っているようで。そこからはまったく同じもの。同じ映像が使われるまでの時間の20秒という短さにもびっくりですが、最大の違いは賢人のそれには、「飛羽真ー!」と叫ぶ女の子の声や周りの音がある。そして、異世界への扉である本が閉じた後、その惨劇を間近で見届けたカリバーを、パニックになりながら見つめる幼き日の賢人。というふうに前後の記憶のピースがハッキリしている。つまり事件の真相・飛羽真が探したいという”答え”を賢人は知っているわけです。

この違いを、同じ記憶を見ているが、記憶の内容を無音にするかどうかで二人の心情の違いまで描写しきったのは感服のひと言です。

このシリアスなシーン。
賢人も飛羽真の抱えているものの辛さがわかるから、「聞きたいことがあるんじゃないのか?」これ、遠回しに「俺はその答えを知っている」と飛羽真に対して言っているのですが、賢人は自分の父子関係のことが整理づいていないから、唇をかんで、目をそらして、うつむきながら、ボソッという。

一方の飛羽真はカリバーを「夢の中で見た剣士」として認知はしているが、カリバー=賢人の父だとはまだ知らない。賢人はそれもあって暗い表情をしているんだけど、飛羽真はそこまではまだ知らない。けれども、「ここで賢人に”答え”に関することを聞いてはいけないんだな」と察しての、「いや、ないよ。」その時にアップに映るのが、尾上さんから渡ったストームイーグルのワンダーライドブック。こんなことされると、私たち視聴者には否が応でも直前の「みんなそれぞれ抱えてるもんがある。お前が守り抜け」の尾上さんのセリフがよみがえる。

たぶんそれは飛羽真も同じで、聞きたいし、聞いてくれと言わんばかりの賢人の表情を見て意を決して聞こうと詰め寄るが、そのとき机に当たった「カチャ」という音が耳に入ったことで、手元を見て飛羽真も尾上さんにかけられた言葉を思い出す。

そしてその後の一連の言葉を受け止めた賢人にも、尾上さんの「あいつはよ、守ってやらなきゃいけねぇくらい弱いのかね?」がよぎったのか、飛羽真の(精神的な)強さというか成長。記憶は失っていても、時間は止まってないんだな。ということが腑に落ちたんでしょうね。「助けが必要な時は必ず言ってくれ」に あぁと頷きながら答える賢人の表情はそれまでとは違い、どこか晴れ晴れとしたものでした。このときに自分の中で整理もできたから、メギドとの戦闘が終わり変身を解いた後、自分に駆け寄ってきた飛羽真に「記憶が戻ったら聞いてほしいことがある。」と賢人。

私はこの時、変身を解除して会話している というのが大きな意味があると思っていて。
というのも、仮面ライダーとしての変身を解くということは、仮面ライダーではなくなる。つまり『仮面』を脱ぐということ。
これは声をかけた賢人も、負の感情や真相を打ち明けることの辛さ等すべてを相殺して整理ができたという意味。あのシーンではまだおたがいにわだかまりや隔たりがあったけれども、今度こそそれがなくなり、飛羽真が”答え”を求めた時には、晴れやかな気持ちで・堂々と真相を話すことができる。ということの暗喩であり同時に
あの時俺は、本当は自分も聞いてほしかったんだ ということを面と向かって飛羽真に対して言えた瞬間でもあったわけですね。

次は、子どもを持った今だからこそ分かる尾上さんの心情
について書こうと思いますが、それは長くなってきたのでまた次回ということで。
それでは、今日はこの辺で。
~風の向くまま。気の向くままに~